渇いた。
飛行機が撃ち落とされようと
子供の手足がもぎ取られようと
地球は容赦ないスピードで
ぐるぐると回って
また、朝が来るのだ。
まぶたを開いたときの
エアコンから髪を撫でる風
布団は足をのんびり包んでいる。
渇いた。喉が渇いた。
ゆうべ飲んだワインは
変色した血のような色をしていた。
僕らは牛を殺して焼いた肉を食べて
おいしいおいしいと笑った。
渇いた。愛が渇いた。
額に貼った冷却シートは
とうにパリパリに剥がれてしまって
寝起きの僕はiPhoneの向こうの
遠い遠い世界の出来事たちを、
目をこすりながら眺めるしかないのだ。
君の真新しいピンクのサンダルも
花火大会も浴衣の女性たちも
モノクロでしか思い出せない今朝だ。
渇いた。喉が渇いた。
砂漠に立つ僕を想像してみる
砂埃とうだるようなメラメラとした空気、
爆音。
渇いた。僕が渇いた。
ああ、ほんとうに渇いた。