猿とぼくと餌
遊園地で、ぼくではとうていできないような芸当をしていたおさるさんがいたので、すごいなあとカメラを向けた。周りの人たちもおさるさんのかわいらしさに圧倒されて集まってきた。一袋百円の餌を与えると、もっと長く芸当をしてくれるというので、ぼくは何袋も買って投げ続けた。
日が暮れて、そこにはぼくと猿しかいなくなくなった。ボロボロの服を着た掃除夫がぼくのところに来て言った。「ほんとうはね、そんなに投げるもんじゃないんだ、それは」と。ぼくは、彼の言わんとしていることがよくわからなかった。猿はまだ笑顔を作ってキラキラぼくのことを待っているように見えた。夕日のせいかもしれなかった。