考えないようにして生きている
考えないようにして生きている
忘れたふりをして生きている
悲鳴やどくどくと流れる血やサイレン
私が冷静でいるしかなかった
私ががんばるしかなかった
できるだけ
歪んだ家庭のことをまるで忘れたかのように解決したかのようにふるまうが、たまにぽろりと記憶が落ちてくるのだった
融けて流れる流氷みたいに、忘れたはずの事柄は重みをもって私に押し寄せる。ゆっくりと、それらは私の体を押す。私は窒息しそうになりながら、死者の声を聞く。
こっちへおいで。
もう充分つかれたでしょう。
簡単に死ねるのだから。
しかし、まだまだやることは詰まっている。明日、生きる。そしてまた明後日も。死者の記憶たちよ、私を飲み込んでゆかないでください、お願いだから。今は、生きてやるべきことがあるのです。