にくしみ、あらそいは、どうして
ぼくらからはどうして
にくしみが消えないのかな。
ゆうがた、やわらかな風がさらさらながれるこの街で
ぼくらはどうして
人をくるしめてしまうのかな。
ゆうべ点けたテレビでは
人が人を指さしてさも愉快そうに笑い転げていて
窓の外からは野良猫の飢えた声がした。
みんなどうやってあんなにきれいな服を着て
おんなのひとはきれいにお化粧をしてるんだろう。
そんな箱の中の虚像をお手本にして、ぼくらは
明日も社会に出るために満員電車に乗り込むのだけれど。
人をくるしめるのだったら、傷つけとまどわせるのだったら、
ぼくひとりなんかは消えてしまったほうがいいのかな。
ぼくは、もううたがうたえなくなってしまった。
ぼくにできることは、ここで静かにつむぐだけで。
ぼくらからはどうして、
みにくさが消えないのかな。
フライパンの底に焦げついた汚れを
ぼくは、たわしでごしごしとこする。
力いっぱいこする。ぼくのきたなさを。
どうしてぼくらは、人をころすのかな。
この、文明的になった世界で。
こんなにも、せかいはうつくしくみえるときだってあるのに
どうしてぼくらは、あらそいつづけてしまうのかなあ。