片隅でうたい続ける、わたしたちは。

詩人の秋野りょうと、写真家千川うた(仮)の女性二人のユニットで綴る、詩のブログです。

眠る前にはいつも、死の一文字がよぎるけれども。

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生きていく山道の
途中の険しさや煩わしさを、
その道端に投げ出してしまいたい。
あとはもう、振り返りたくないのだ。
ヘンゼルとグレーテルのパン屑みたいに、
ほんとうは。


暗い森を一刻も早く抜け出したいのだけれども出口は見つからずに、今夜も眠る前には死が訪れる。



呼吸もできない記憶、あのときの自分。
あのとき人でなくモノであった、
そういうたぐいの、一刻も早く棄てたい記憶。

無意識の底から映写機はぼんやり発光を始めてからからとからからと回り出して息ができない。できない。できない。涙がとても細くこぼれてくる。喉が渇いて、苦しい。私の無意識に誰か水をやってください。耕してください、私の心を、豊かな肥料を撒いて。そして新しく種を植えてください。このままでは、やせた苗しか育たないでしょう。果実などとうてい実らないでしょう。もう誰もいない暗いスクリーンを眺めているとからからとからからと音だけが響きます。

どうか映写機が止まって私たちが前へと進めますように。眠るのはひとりでも、ふたりでも怖い。ブラックホールに吸い込まれてもう二度と戻れないのではないか。明日目覚めたとき隣のこの人は確実にいて、微笑みかけてくれるのだろうか。


それでも、今、やすらかな寝息があるから。


私たちが食卓を
ともに、囲めることを
天に感謝します。
私たちは
さまざまな家庭の形を持ちながら、
お互いの心を
きっと耕しているに違いない。
神様にも政治家にも頼めないならば
私たちが愛しあえばよいのだから。
愛にあふれた食卓でもファミレスでも、
コンビニのお弁当でもハンバーガーでも、
私たちはお互いに種を蒔いている。


そしてしぜんと新しい記憶が育まれ、
あの映写機はいつかは消えてなくなるでしょう。
私たちは、これからたくさん、幸せになればいい。
私たちには、これからたくさん、幸せになる権利があります。


神様、空の果てを思います。
平和をください。
ただの不眠症の精神病患者の私の平和ではなく、
何の罪もなく希望を持って生きていたはずの子供たちへの平和を。
一刻も早く。

私などは睡眠薬にまみれて何も効かなくなって、過去のつまらない恐怖に震えていてもよいのだ。
それが爆弾が降る下でいま、逃げまどう人々の恐怖とどう釣り合いがとれるというものか。
堕ちてゆき、燃えさかる飛行機の中で何人の子供が泣いたのだろうか、その言葉にならない悲惨さよ。
子を失った親の、親を失った子のかなしみをおもいます。
神様、どうか和らぎあふれた地球を、私たちにください。