片隅でうたい続ける、わたしたちは。

詩人の秋野りょうと、写真家千川うた(仮)の女性二人のユニットで綴る、詩のブログです。

二輪の祈り

f:id:acchonbrico:20140415013125j:plain



公民館のグランドピアノの傍でちょこんと座った私の髪はギュッときつく結われ、花びらのようなフリルのドレスを着させられて、その日一日はまるでお姫様でした。花束のにおい。おかあさんの拍手。おとうさんのビデオカメラ。

(私があの舞台に置いてきてしまったもの は、今も残っているのでしょうか)

もう一度、やわらかな光とやわらかな色のドレスを身にまとった日、私は涙を流しました。

これからは彼とやっていけると。きっと、ずっとうまくやってゆけると。

お互いがお互い、底知れぬ孤独を抱えてもがき苦しんでいた暮らしはもう、終わりました。これから私たちはまるで二輪の花のように、少しずつ腐って枯れてぽとりと首が落ちてしまうまで、隣り合ってみずみずしく、精一杯輝いて生きていこうと。

(生命のみずみずしさよ!あなたのかじった果物の、はだしで歩いた足跡の、その白い衣が歩くときに擦れて奏でられたであろう小さな音の、あなたに注がれた香油の、あなたの分け与えられたパンのように!私たちは、ずっと起きて祈っています。)

あなたの御前で誓った冬から、初めての春を迎えて思います。どうか、私に光をください。いつもあなたの枝であり、またそして、小さな小さな花である、私に。私たちに。私たちの小さな家庭に。