片隅でうたい続ける、わたしたちは。

詩人の秋野りょうと、写真家千川うた(仮)の女性二人のユニットで綴る、詩のブログです。

不眠症短歌15

おかしいか?「女性の自立」叫ぶこと、はたから見てて「痛々しい」か?

手を叩け!足踏み鳴らせ!もしきみが、きみの幸せ見つけられたら

この年を布団の中で越せぬ人、広がる格差増える哀しみ

ぼくたちが声あげてゆき変えないと、これから先も何も変わらぬ

「ほんとうの民主主義」とは何なのか一生かけて考えてこう

 

皮剥けた唇に塗るオロナイン

「私の好きな私」でいたい

不眠症短歌15

下ネタも燃料にすりゃ生きてける、そんな気持ちで歩いてきてる

泥酔をして、五七五がひらめいて、公開ボタン押す手が止まる

「前を見ろ」「迷うことなく上にゆけ」私は“否”だ、後ろも向くよ

手をつなぎ改札の端ハグをする、長い人生そんな日もいい

「ぼくはぼく、あなたはあなた」そのことは変えられないし変えたくはない

ランタンの光とともに眠剤と耳栓無けりゃ眠れないです

短歌なら現代詩ならフィクションで、仕事モードを一歩抜けれて

ヘドバンをして整体に行くようなハチャメチャさ持つ自分が好きだ

あの人がせわしないほど吐いていた煙となって空、届きたい

東京へあなたが会いに来なければ私はきっと生きていけない

女とは? 男についてく女にはなりたくはない、舌を噛んでも

デブだった私も好きだ、痩せている現在の私も私は好きだ

宇宙船から青い星見下ろすと無数の光、イルミネーション

眠剤が効いてきたからそろそろね、寝るよ」と言える電話の向こう

きみのこと毎日考えているほどぼくに時間も余裕もなくて

ぼくのこと毎日考えているほどきみはぼくには関心なくて

おだやかな気持ちにさせて、iPhoneのプレイリストよ、さあ、ファンタジア!

「モテる服」「カワいい服」もいいけれどぼくが選ぶのは自分らしさだ

前髪をバッサリ切って目標を掲げる顔で歩く街並み

ビュンビュンと過ぎ去ってゆく日常を振り返ったり次、眺めたり

ボロボロにメモした手帳汚くて、それでも何か考えたくて

後悔はしてないよ、だってあのせいでしちゃったことも人生だから

十字架のように背負って生きてゆくあの人の罪あの人の咎

神様よ、もしいるならば声をかけ、ぼくに「眠れ」と優しく言って。

ウィーンの冬は寒くて凍えてた、池袋でまた今日凍えてた

ウィーンの雪合戦は楽しくて、みんな笑った。ぼくも笑った。

「何事も無駄になることなどない」と、私の母は強く言うのだ

「毒親」は「毒親」だけど、でもなくて、あの環境であれしかなくて

省みることではなくてこれからを善く生きてゆく、関係性とは?

感性を磨きたいのだ、まるでアイスピックのごと鋭く強く

誘惑に負けて煙草を吸ったから明日はシャワーしてかないとな

ぼくたちはあの日一緒に戦った、それがこれから原点となる

決意して書いてるわけじゃないんです、書きたいからこそ書いてるんです

家に着きペットボトルを飲み干して電話の声を反芻してた

よれよれになっても死なないしばらくは、生きる気力がまだあるうちは

絶望はいつか光へ変わるよね、変わったことが信じる理由。

さようなら今日のぼくへとさようなら、眠ってまた明日会いましょう、ぼく。

「メンヘラ」も武器にしてでも書くんだで、地獄の底で強く「弱さ」を。

保湿してまた保湿して保湿して。「女で在れ」と、「乾かず居ろ」と。

戦って生きてくことを決めている私の夢にイエスの衣

泥だらけになってもいい、被るのがぼくだけならば、きみじゃないなら

少しずつぼくの弱さを忘れつつ生きてるぼくにイエローカード

あのときの舞台の光今もなお忘れないから今、書いている

観客はみな匿名のマスク付け僕らの演技嗤って見てる

けれどもし、ぼくの演技が通じれば、ぼくの言葉が届くのならば。

「当事者」をライフル銃に持ち替えてブチ壊したい、貧しい社会

不眠症短歌14

目薬もうまくさせない三十のオトナにぼくはなってしまった

ゴミばかり棄てられてゆく地球にはゴミばかり書くわたくしが立つ

人を待つ「時」がキラキラ光っててスタバで頼むホットカフェラテ

「関節が痛むね」「だって冬だから」なんて笑って寒さ乗り切れ

世の中に「まともな人」は少なくて「おかしな人」が弾圧されて

ロックとは、パンクに生きるということは、自分の芯を貫くことだ

安全な位置からぼくを嗤う人、一度こっちに遊びに来なよ

劇場で越すクリスマス、いつもより少し暗くて温かかった

知らぬ間に傷ついてきた、あのことやこのことにぼく、振り回されて

あの夜のことなど早く忘れたいけれど痛みは忘れたくない

「ファミレスに行こう」「夜でもお茶しよう」きみのLINEでぽかぽかになる

今はまだ稚魚でしかないぼくだけど日々餌を食べ育ってみせる

不眠症短歌13

(朝に起きて、なかなか目覚められないときに)

 

粉雪のようにひらりと舞う君の揺れるスカート、恋始まれり

 

国なんてモノにいつまで縛られる?「地球ぜんたい平和」を祈れ

 

「クリスマス」今年またもややってくるそれに慄き礼拝へ行く

 

永遠て言葉を僕の手に書いた君は何かを証明しかけた?

ねむれないからたすけてよ

ねむれないんだ きみよ たすけてよ

くすりを いちじょう こっそり ふやすよ

あしたは どうしても がんばりたいんだ

おゆを のむよ あったかい おゆを

そちらには とどかないんだろう あったかさが

ずっと こごえているままなのだろうか きみは

ふゆのみちを あるいたことを おもいだしたよ

きみの かしてくれた ながぐつもね

たすけてよ ぼくを たすけてよ

ねむれないんだ ねむると しんじゃいそうなんだよ

鱗粉

あなたの魔法の鱗粉で

わたしの瞼を輝かせてください。

とろけるような蜂蜜で

わたしの唇を濡らしてください。

 

羽を広げてそちらまで

今すぐわたしがゆけたなら。

けれども寒さで力尽き

途中で地面へ墜ちるでしょう。

 

そうしてだれかがそれを踏み

ばらばらになり死ぬでしょう。

空気の中に鱗粉と、

あなたの記憶が漂うでしょう。

 

あなたはきっとそれを見て

「愛していた」と嗤うでしょう。

ほんとうは、籠を捨てて、歌いたかった。

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深い、黒い森の奥で

 おんなが てまねきして いった

「これを、お食べ」

 

ガブリと躊躇なくかぶりついたその球体は血の色をしていて、噛みしめれば噛みしめるほど子宮が痛み、子宮口からは5センチの胎児が出てきた。赤黒い体液を洗い流せば、胎児は青白く輝き、私はまた、それを食べた。自分を食べる、自分を、自分を、永遠にループするように食べる。食べて、生きる。

 

冷たい、パリの路地裏で

 おんなが てまねきして いった

「これを、お付け」

 

長く鋭く尖った爪から手渡されたそれは金色に輝く指輪だった。私はそれがずっと欲しかったのだ、ヨハネの首を懇願するサロメのように。それを付ければ、私は街で一番の人気者になれるはずだった、私のなりたかった「私」になれるはずだった、輝けるはずだった。

左手の中指にはめると指輪は抜けなくなり、瞬く間に黒ずんだ。襟元が大きく開いたドレスを着て、毛皮のコートを羽織りながら街に立つ。「誰か私を買ってください」と。手・招・き し・な・が・ら。

 

ああ あの おんなは わたくし だったのだ

 

狭い、屋根裏部屋で

 おとこが わたしをだいて いった

「これを、お飲み」

 

差し出された液体は深く赤みを帯びて、飲み干すとそれは男の血の味に似ていた。痛すぎるセックスに耐えようとして(でもそうでもしなければ生きていけなくて)、思わずガブリ、と噛みついたとき、男の肩からわずかに出た、血の味に。お札をベッドにそっと置いた男の後ろ姿を、私はぐさりと刺して、食べた。お前を食べる、食べる、食べてやる。食べて、養分にして、生きてやる。生き延びてやる。

 

ほんとうは私も街に出て、果実も指輪もワインも、マッチや何やらがすべて詰まった籠すらも(ああ、私を囲んでいるこの頑丈で窮屈すぎる籠というものを、醜い社会というものも)全部棄てて「私の名前はミミ」とでも、大声で歌い、響かせたかった。通りすがってゆくすべての人々に、私の存在を知らせたかった。知ってもらいたかった。

 

けれども わたくしには

なまえが なかった。